Published: December 14, 2018
axionは「経済紙のNetflix」です。現代は情報の急増、SEOサイトによる検索クラック、フェイクニュースなど情報のミスマッチを生む要素にあふれています。ユーザーが自分が触れている情報の価値密度を向上させたいと考えたとき、相応のリテラシーと時間を要することになります。 これは多大なコストと言えます。
新聞、テレビ、雑誌などを提供するレガシーパブリッシャーは、古典的な情報生成機能しか持ちあわせていません。経済は技術指向で急激に変化しており、レガシーとその消費者は置いてけぼりを食っています。レガシーが生成した情報をシャッフルして配信するポータルサイト、キュレーションアプリのビジネスが成功していますが、情報の中身はシャッフルされただけに過ぎず、全く高質化されていません。またウェブメディアの大半はアンフェアなビジネス構造の餌食になり、低いコストで低い質のコンテンツを濫造するようになってしまいました。
このコンテクストの中で、我々はあなたが最も必要としている「高い価値密度」を提供すると決意しています。axion は推薦システムでパーソナライズされた内製ハイエンドコンテンツと外部調達コンテンツを提供します。axion はマルチフォーマットでコンテンツをユーザーに提供します。ユーザーは文脈に応じてテキスト、オーディオブック、ビデオを選択できます。 axion は、Web、iOS、および Android にわたるマルチプラットフォームでのアプリケーション開発を想定します。
顧客は購読(サブスクライブ)により axion に定期的に購読料を支払います。購読料支払いがサービスへの満足を裏付けるため、広告モデルと異なり、ユーザーは axion のビジネスモデルの透明性を実感するはずです。我々にも支払われる購読料に応えたいいコンテンツとサービスを作る誘因が生まれています。購読者以外にも無料コンテンツにアクセスすることができます(当面はすべて無料です)。
コンテンツが扱うのは、テクノロジーと経済が交差する点に集中していきます。この領域は、主に人文・社会科学系の人材で構成される既存メディアがうまく価値を提供できていない分野です。この領域の情報の欠如はユーザーであるビジネスパーソン、特に日本語という言語ハンデを抱える日本人ビジネスパーソンにとっては大きく響いています。”日本株式会社”が経済の趨勢を読み違い正しい判断をできなかったと僕は考えていますが、流通している情報がそこに大きく影響をしているのは火を見るよりも明らかです。
axion が扱う地域は主にアジアです。アジア経済の台頭は指摘するに及びません。特に中国で開発された先進的なテック経済モデルは他のアジア諸国に浸透すると予測されます。中国はモバイルペイメントと電子商取引が劇的に浸透した、深くデジタル化された経済です。 中国のモデルはASEAN諸国とインドに移植されています。これらの2つの地域もまた高度なテック経済に変貌するでしょう。アジアにおける技術経済の分析と予測を包括的に扱うハイエンドの情報プールは存在しません。アジアにおけるテクノロジー経済の勃興と変化を正確に捉える情報ソースが必要なのは確かです。
僕の最初の職歴はインドネシアでの政治経済記者として始まりました。5年に及ぶ滞在のうちにインドネシアの社会、文化、経済の基礎的な要因を熟知し、インドネシア語と英語を操り、外国人ジャーナリストだけでなく、外国人ビジネスマンのなかでも群を抜く事情通なることができました。2014年の大統領選挙ではゲーム理論を応用した情勢分析と独自の調査、そして経済学のバックグラウンドを活かした定量的な分析などを通じて、正確な情勢予測を私の読者の方に届けることができました。私の業績はジャーナリストにとどまりませんでしたが、ジャーナリストととしても「石油マフィア」と呼ばれる中央政府予算の2割超に関連する大規模な汚職疑惑を初めて告発する、大スクープを出しました(このスクープの後、数カ月後に私は同国を去ることを決意しました。そういう状況だったと言えばいいでしょうか)。
当時私の印象に残ったことがありました。それはアジアという枠組みのなかで明快な政治経済の分析情報を提供する媒体が存在しないことでした。最上位ランクの国際メディアでもインドネシアに関する報道だと、事実の誤認や、背景事情に精通していないことが明らかな論理構成が見て取れました。彼らはシンガポールに小さな支部があるか、契約記者を置いているだけだったのです。確かにシンガポールではたくさんお金を払えば投資家向けの粒度の高い情報を得ることができますが、それでも細部は正確性が欠けているようでした。なぜなら、シンガポールを除いた東南アジアやインドなどの地域はとても不確実性が濃いのです。政府統計やリサーチ会社やコンサル会社のサーベイ、調査の内容があてになりませんし、重要な情報や不文律のようなものは表には出てきません(政府統計の誤りが表面化した日本も似たようなものですね)。先に話したように、テック経済が勃興している中では、アジア地域は内外のビジネスパーソンにとって極めて視界不良だと感じられます。僕はここに潜在的な大きな需要を感じています。
したがって axion はアジアの経済情報ネットワークになることを目指します。axion はアジアから次世代の新しい経済が生まれてくることを積極的に目指しています。同時に北東アジアで言語障壁とかつての栄光に囚われて身動きが効かない日本、その日本の枠組みの中で苦闘しているビジネスパーソンの方々を、世界経済の中心であるアジアの世界に連れて行くことも目標に据えています。
3つの重要なポイントがあります。
1つめは「テクノロジー×経済」です。我々は経済学とテクノロジーの融合に力を注ぎます。テクノロジー企業はオークション、ダイナミックプライシング、マッチングアルゴリズム、因果推論など経済学の知見を積極的に取り入れています。CSと経済学にはマーケットデザインやアルゴリズム的ゲーム理論のように明らかに相思相愛が見て取れる領域があります。この領域は切り開かれている未来そのものなのです。この知識はビジネススクール卒業者が振りかざす学部2年生レベルのミクロ経済学の知識とはその有用性に大きな差があります。
暗号通貨、ブロックチェーンで構成するクリプトエコノミクスはその最たる実験の場である。一時のブームは終わったものの、CSや経済学の一部の人々は既存の貨幣、経済秩序が「とりあえず」のものだと気づいた。僕たちはもっといい経済のなかで暮らしていけるかもしれません。
機械学習が経済に大きな影響を与える可能性があることは、すでに長年議論がされています。ジョージ・メイソン大学の経済学教授、タイラー・コーエンはかつて発達したコンピューティングの社会適用で、コンピュータをうまく利用できる人々とそうでない人々の間に未曾有の格差が生まれると予測しました。シリコンバレーの楽観主義者は人間はやがて仕事を機会に委託し、ベーシックインカムで生活するようになると考えています。
「エージェントが暗号通貨を使い仮想経済活動を行う」という実験が可能かもしれません。リアルタイムストラテジーゲームであるStarcraftで、DeepMindは人間を打ちのめしました。狭められた条件のなかで適切な要件とインセンティブを設定すれば、エージェントたちによる仮想経済を試験することができるのではないでしょうか。金融市場の大半の取引はすでにアルゴリズミックにされています。アルゴリズムはしばしば人間より賢いのです。
もちろんテクノロジーはCSに限りません。近年はバイオに注目が集まっています。axion は経済に大きなインパクトを与えそうなテクノロジーすべてに関心があるのです。
2つめはアジア版の「Freakonomics(ヤバい経済学)」を作ることです。ヤバい経済学は主に書籍としてよく知られています。その書籍では気鋭の若手経済学者(だんだん年をとってきましたが)が、経済学や統計学の手法を犯罪の統計から大相撲の試合結果まで、さまざまなものに応用して分析を試みるものです。
実際には書籍ではなくブログとポッドキャストがその活動の中心にあります。とてもカジュアルな書かれ方をしたブログとポッドキャストを追っていけば、経済学の基礎的な素養を身につけることができます。最近は映画にまでなってしまいました。
中国のモバイルペイメント、アリババの信用スコア「芝麻信用」、Sensetimeのチャイニーズパノプティコン、メッセージングアプリを利用した「手作りeコマース」などネタは豊富にあります。Facebookはその中期から中国のトレンドにまなざしを送り、テンセントの戦略を真似ることを繰り返してきました。世界で最も進化したユニークなテック経済が我々の目の前にあります。
3つ目は「アジアのテックサビー(現代テクノロジーに精通した)な The Economist」を作ることです。皆さんは The Economist をご存知でしょうか。経済メディアの最上位の位置づけの週刊誌です。大英帝国的な視点で、世界のニュースに英国人らしい皮肉に満ちた表現で装飾された情報が並んでいます。毎週土曜日に新刊がでるので、欧米の企業社会の経営層は The Economist を週末に読んで、その一週間の世界の出来事をなぞるわけです。
日本及びアジアには The Economist に匹敵するハイエンドの経済メディアが存在しません。日本では平社員から上位の役員までが同じ日本経済新聞や週刊ダイヤモンドを読んでいます。これらの媒体では字はどんどん大きくなり、費やされる労力が減り、出版不況や従業員の高齢化などを背景に、日に日に内容が現代から取り残されている印象です。
The Economist が完璧かというとそうとも言えません。ふたつの理由が思いつきます。ひとつはテックサビーではないことです。GoogleとFacebookのネット広告支配を扱う特集記事では、ほとんど「競争相手としての苦情」としか思えない内容を繰り返していました。もちろん、それでも日本の経済メディアと比べれば情報も早いし、着目点もエレガントだとは思いますが。もうひとつは彼らが特に大陸欧州とは距離をとる英国とアメリカに軸足をおいていることです。つまり、アジアには重要な拠点もなくあまり詳しくもないことです。
だからこそ、アジアのテックサビーな The Economistを目指す「愉しみ」があるのです。axion は多言語展開をしていきます(日本語でも引き続き楽しめます)。すでにベータ版にも英語の記事を混ぜておきました。将来的にはコンテンツの中心言語を英語にし、日本語、北京語、広東語、インドネシア語、タイ語などをローカライズ時の言語にしようと考えています。もちろん日本語でも英語と同じコンテンツを楽しむことができます。同時に我々はアジアの主要な都市に拠点を広げていきたいと考えています。我々はすべての人種を雇用する用意があり、意思疎通を円滑にするために近い将来には英語を社内言語にするでしょう。
MVPはGatsby, Contentful, Firebaseの静的サイトの構成です。アプリの実行時にAPIリクエストを行う SPA とは異なり、Gatsby はビルド時にローカルファイルからのデータの取得を含め、すべてのデータの取得を済ませてしまいます。この手段によりロード時間を短くすることに成功しています。詳しくは以下をどうぞ御覧ください。
しかし、今後はシングルページアプリケーション(SPA)へとサイトを変貌させないといけません。ログインしたユーザーに対し推薦システムでユーザーの嗜好に合うコンテンツ群を提示することを検討しているからです。
将来的にモバイルクライアントを開発することが目に見えているため、それに適合するMicroservicesアーキテクチャを採用します。そのためWebアプリケーション開発の現段階からフロントエンドのためのバックエンド(サーバ)であるBackends For Frontends(BFF)を構築します。BFFサーバを立てることで、さまざまな処理をBFFに移譲させることができ、バックエンドでセッションなどを管理する必要はなくなります。
バックエンドでは記事、画像、動画コンテンツ等の管理、推薦システム等を構築します。Contentfulにコンテンツ管理とデリバリの責務を与えているように、サードパーティAPIを組み合わせる形でバックエンドを構成することを厭いません。
BFFの導入により、フロントエンドとバックエンドの境界を設けてアーキテクチャのレイヤーを分割することで役割を明確にし、独立して開発を進めやすくなります。推薦システムの開発は独立したチームが必要な、技術とビジネスの両面において重要な機能です。モノリシックな開発に比べ速度感が劣る点もあるかもしれませんが、長期的にはこのアプローチの方が利得が大きいと想定しています。
こちらのビジネスプランにもビジネス開発の一端が載っています。投資家向けのものには詳細がありますが、さすがに公開はできません。公開情報から推測することを推奨します。
英語版
https://drive.google.com/open?id=1njrKU_oRaCSc2sgj5w9XFkXmXfe9zWNa
日本語版
https://drive.google.com/open?id=1t-gHwMJnxYrybdq3pFeOJLETCUdgsboS
このビジネスではコンテンツと開発の二輪が重要です。いいコンテンツといいプロダクトでユーザー体験を向上させることが重要です。
僕は定額課金制**コンテンツ・サービスの先行者であるNetflixやSpotifyのビジネス戦略を見本にしています。僕はユーザーが支払ったお金をコンテンツに再投資しビジネスプロセスへの第三者関与を最小限に抑えるのです。コンテンツ投資はマーケティング投資を兼ねてしまう側面があり、コンテンツ投資の方がマーケティング投資に比べて長期的な効果を楽しめる側面があります。質の高いコンテンツを一定数以上集めることは定額課金制コンテンツ・サービスを成功させる重要な条件なのです。
コンテンツ製作に関しては外部からの調達と内製の双方の機能を持とうと考えています。日本の業界的な特徴を鑑みると、僕が高品質と考えるニュースを一定数購入することは難しいと考えています。それを調達するには我々自身で製作するしかありません。同時に自らすべてを製作するのは効率的ではありません。パートナシップやサードパーティ配信を拡充することを検討しています。
序盤戦は攻撃的なマーケティングを手控えます。プロダクトには受け止められるユーザー、体験の「器」のようなものが存在します。この「器」を超える量のトラフィックは短期的にはとてもいい気分にさせてくれますが、彼らが定着しないケースが多いです。それは相性が悪い人をマーケティングで連れてきたり、ユーザーの期待効用を満たせなかったりするなどの原因が想定されています。
基本的にはデータウェアハウスにデータを格納し、分析することが重要です。アドテク、CRMなどツール、手段への深い洞察が必要です。不確実性が濃い場合が多いときには確率的推論を用いて打ち手を細やかに変化させることも重要です。前職では米系デジタルマーケティングの日本版を立ち上げました。アメリカの最新事例やエコシステム形成する諸企業に触れ合う機会がありました。その経験を十二分に活かそうと思います。ただし、繰り返しますが、プロダクトの体験が一定基準を超えていなければ、マーケティングは水の泡となります。
僕は3点のビジネス運営における基本的な考え方を定めておきたいと考えています。これらは基本的に経済学の知見に拠るものです。
ひとつは定量的な分析。会社の経営については定量的な議論をその基底とします。企業経営の判断はしばしば感情や現状維持バイアスなど様々な認知バイアスに影響されてしまうことがあります。axion は定量的に実証された事実を信じ、勘はほとんど信じません。
2つ目は不確実性下の意思決定を磨き上げることです。ビジネスにおける競争は不確実性に満ちています。定量的な分析と静的な計画の実行で、目標を成し遂げられることは余りありません。「不確実な状況下での意思決定にはリスクが含まれるため、 現実システムの不確実性をモデル化し、 確率的変動要素を考慮した解法を見いだすことが求められます」。理論としてはこの通りですが、現実世界の不確実性はより不確実であり、得られない情報がごまんとあるものです。それでも僕は最適解の近似値を得る努力を怠りません。それからこの不確実性に対処するための諸々のテクニック(ゲーム理論、行動経済学、ベイズ推定等など)を利用していきます。
3つ目はマーケットデザインという視点です。よくできたアプリケーションをつくることは、そのアプリ固有のマーケットをデザインすることです。理論を補完するために工学的なアプローチを用いることをいといません。
そろそろ最初の資金調達をしようと考えています。資金調達に関しては、交渉のコストが新興企業にとって高いことと、不確実性の濃いプレイヤーとの遭遇、タフな交渉が想定されていたこと、そしてある程度自己資金があるということで、引き伸ばしてきました。上記のようにNetflix、Spotifyの戦略を真似るのならば、利益の包括的な再投資により長期的な赤字を覚悟しなくてはいけません。調達の最初期から株を放出していると、この戦い方は叶わず、広告のような中小企業が手がけると労働集約的な傾向を帯びる事業の採用をしなくてはいけません。できるかぎり交渉材料を揃えた上で株式と現金を交換していかなければならないと判断しました。
スタートアップ開始から一年半程度、自己資金でいくつかのビジネスアイデアを試し、それを止めて今の形があります。通常のケースならば、シード、プレシリーズAの投資を燃やし、資金調達に費やせる株式を失っている状態になっているはずです。僕はその状態を回避していますし、会社自体存在していません。これは非常に大きいです。
昨年3月に暗号通貨関連のプロジェクトを停止してから僕はずっとボトルネックになり続けている開発能力に投資しています。ヘネパタ、パタヘネのCSの基礎から学んだ結果、プログラミングスクールを終えたRailsエンジニアを揃えていくという陥りがちな失敗を回避しています。いまではどのような開発者が必要かを理解しています。この開発以外の分野に関してはすべて経験があります。ボトルネックを解消さえすれば勝率の高いゲームが約束されているはずです。
資金調達の前に満たすべき条件があります。それは創業メンバーの確保です。適正な創業メンバーを揃えた場合、プロジェクトの先を見通すことができますし、投資家との交渉能力が高まります。仮にメンバーが集まらない場合は1人で資金調達をしようと思います。私の開発能力も向上しています。投入した時間が開発能力という報酬をもたらしつつあります。これにより開発者の獲得可能性も向上するはずです。
留意点が2点あります。1つは学生スタートアップのようにいたずらに人を増やさないことです。能力主義の筋肉質な集団を形成するのが僕の目標です。
もう1つが、1人で資金調達をしている場合に限り投資家との交渉が著しく不調ならば、サラリーマンに戻る方が利得が大きいと判断すればそうします。僕はこれまでさまざまな状況に直面してきました。”愉しみ”のない状況で中小企業の社長はやりたくありません。小金持ちになって自尊心が満たせてそれで満足という人間でもありません。高価値密度の情報伝達手段を作ることで意思決定の質を向上させ、人間を自由にし、その幸福追求を最大化するために、axion に取り組んでいます。