タイのAP社、無印良品と協力しコンドミニアム開発 ゴージャスよりシンプルさを売りに

無印良品をタイで展開するMUJIリテール(タイランド)社がこのほど、タイの不動産大手APとコンドミニアムなどのインテリア事業で提携すると発表しました。シンプルさを売りに商品開発に取り組み、感度の高い中間所得層を取り込む意向です。

APが三菱地所と共同開発を進めるコンドミニアム「ライフ・ピンクラオ」のモデルルームに無印良品の商品を提供する予定です。中心部からやや離れるライフ・ピンクラオの販売価格は249万バーツ(約821万円)からと、価格を抑えることで、所得に余裕があり感度が高い若者を狙います。

無印良品は近年、東南アジア地域への投資を強化しており、タイでは2017年にバンコク中心部にある巨大商業施設セントラルワールドの店舗を大幅に増床。Found MUJIやMUJI Laboなどを初めて取り扱っているほか、特に住空間ゾーンを拡大し、インテリアグリーンや住空間商材の販売員「インテリアアドバイザー」の導入を開始しました。マレーシアでも2016年にそれまでの2倍の販売面積となる旗艦店をオープンし、タイと同様にインテリアアドバイザーを配置することで、これまでの「生活雑貨の小売店」といったイメージから日本と同様に住空間をトータルにコーディネートする事業へとシフトしています。

無印とホテル事業の展開模索か

APは明言していないものの、無印良品とホテル事業などにも手を広げたい意向があるでしょう。2017年に競合の不動産大手センシリ社が、米国でライフスタイルホテルを展開する「ザ・スタンダード」に出資し、こうしたノウハウを取り入れた高級レジデンスの開発を始めることを明らかにしているためです。

タイではコンドミニアムの建設ラッシュが続いています。各社は商業施設を隣接させたり、緑豊かな公園をアピールしたりはしますが、住居自体はどれも画一化された印象です。センシリは「ザ・スタンダード」と同時に英国のライフスタイル誌「モノクル」を発行するモノクル社への出資も発表し、同社と共同でコンドミニアムやカフェを建設する計画を発表しました。センシリ社は中層のラグジュアリー感を打ち出したコンドミニアムを展開しており、APはこれと対抗し「簡素できめ細かい配慮のある無印良品」(APのウィタカーン・コンドミニアム事業部長)と組むことで差別化し、タイの中間層を取り込みたい考えです。

タイのディベロッパーの都市開発は日本や英国など、すでに確立されたブランドイメージから付加価値を醸成する一方、無印良品などの協力する側にとっても、成長する新興国市場をつかめると、協業の形が広がっていきそうです。