Published: October 24, 2017
データ通信費91%減少、Jioの革命的な価格設定
Jioは7月下旬に新しい戦略を導入しました。4Gフィーチャーフォン(4Gガラケー)を通信契約とパッケージにして提供しました。HSBCはJioが一人あたり650-975ルピー(約1150〜約1700円)の「補助金」を与え、端末価格を900円程度(英金融機関HSBC推計)下げると推定しています。他のキャリアを利用して2G端末&2G通信を利用するユーザーを4G端末&4Gネットワークに移転させることがターゲットです。
フィーチャーフォンの機種は「Nokia 5」(画像㊦)。Nokia 5にはMyJio, JioTV, JioCinema, JioMusicというJioアプリケーションが載ります。1社でYouTube、Netflix、Spotifyを持とうとしていると推察できます。Nokia 5は低所得者向けの機種。低所得者を4Gの世界に引き込んで、自社のプラットフォームに載せてしまう戦略です。
Xiamiは端末購入とJio契約で30GBのデータ利用を無料提供すると発表し、ASUSは同様のパッケージで100GBを提供します。
他にもJioはブロードバンドサービス「Jio Fiber」、Wi-Fi hotspotの「Jio Fi」を開始します。これらでも「ダンピング」戦略を敷いています。「Jio Fiber」では現状の事業者よりも極めて速い100Mbps100GBデータを3カ月無料で提供するというキャンペーン。「Jio Fi」ではユーザーは1999ルピーのデバイスと509ルピーのリチャージパックを購入すれば、224GBのReliance Jio のデータ通信を利用できます。
Jioの異次元の戦略によりインドではコネクティビティが「水のように」安くなろうとしています。インドの一つの州ほどのサイズの日本ではなぜここまでデータ通信費がたかいのでしょうか。
Reliance Jioはインドのインターネットのインフラストラクチャーレイヤーからアプリケーションレイヤーまでを支配しようとしています。
人口13億人のインドでは、通信キャリア事業だけでも相当な規模になるはずです。通信キャリアは事業基盤が築いた後はとても収益性が高いです。世界時価総額ランクをみてもチャイナテレコム、AT&T、ベライゾンは上位20社に入っていることが多いです。日本のキャリアは総務省からお叱りを受けるまではトヨタ自動車より儲けていました。だからこそ、Jioはこれだけの大勝負を打てるわけです。
端末を配ってプロプライエタリなアプリケーションエコシステムに囲い込む戦略が成功すれば、中国のBAT(百度、阿里巴巴、テンセント)を凌ぐのモノポリーが生まれる可能性があります。インドではまだネット接続していない人が多く、その人の端末、キャリア、アプリケーションをまるごと確保すれば巨大なユーザーベースになります。
BCGとITEは2020年にインドのインターネットエコノミーは2500億ドル(約27.5兆円)規模まで拡大すると予測し「噴火する直前」と形容しています。Reliance Industryがこの巨大なパイをどの程度専有し、中国のBATのようなモンスターになるのか、余りにも興味深いでしょう。
Mary Meeker ”2017 Internet Trends” http://www.kpcb.com/internet-trends
BCG “India’s Internet Industry to Double by 2020“ https://www.bcg.com/d/news/7april2017-india-internet-industry-doubled-153466