最賃30万ドルのAIスター争奪戦の末、機械学習教育が台頭

サマリー

AI開発競争の中で、労働市場におけるAI専門家の価値が高騰している。給与水準は30万〜50万ドルに達している。ヒーロー人材の収入はゆうに100万ドルを超え、スポーツ選手と同様の水準に届いている。高額の学費を要する博士号取得に限られないAI教育に需要が高まり、人工知能 / 機械学習界隈のスターが開始した教育プロジェクトに注目が集まる。


NYタイムズの「Tech Giants Are Paying Huge Salaries for Scarce AI Talent」はAI研究者の雇用をめぐる問題を説明する良記事だった。抜粋して意訳する。

NYタイムズの「Tech Giants Are Paying Huge Salaries for Scarce AI Talent」はAI研究者の雇用をめぐる問題を説明する両記事だった。抜粋して意訳する。

モントリオールの独立系研究機関であるElement AIによると、世界中で、ハイレベルな人工知能の研究に取り組むために必要なスキルをもつ人は1万人に満たないという。

一般的なAI専門家(博士号ホルダーの新卒から、AIに関する教育を受けていないが、わずか数年の経験を有する人の双方を含む)は年収30万〜50万ドルの給与を得るか、さらに高い給与か株式を得たりする。主要なテック企業からのオファーを享受しているのだ。

AI企業であるDeepMindはGoogleが2014年に6500万ドルで買収時点で約50人を雇用していたが、この企業はAI専門家がいかに高い給与を得るかを説明しています。昨年、英国で最近発表された同社の年次財務報告によると、400人に拡大した同社従業員に依る「スタッフ費用」は1億3800万ドル。従業員一人あたり34万5000ドル。

大学から企業へ、人材囲い込み

AI専門家のアカデミアから企業への移動が顕著な傾向だ。

ここ数年、有名なAI研究者のうち4人が、スタンフォード大学の教授職から離脱しました。ワシントン大学では、20人の人工知能教授のうち6人が離職かあるいは部分的に離脱しており、外部の企業で働いている。

AI人材の確保のほかの手段はM&A。買収目的のほとんどが知識を獲得したAI専門家の従業員を囲い込むことだ。

最たる例はGoogleの前述のDeepMind。他にもジェフリー・ヒントン・トロント大学教授のDNNresearch、フランスのコンピュータビジョンスタートアップMoodstock、パーソナルエージェントなどを手がけるApi.aiなど枚挙にいとまがない。FacebookはベラルーシのMasquerade Technologies、スイスのZurich Eyeを買収。MicrosoftはGeneeと音声認識スタートアップMaluubaを買収。他にもTwitterは、Mad Bit、Whetlab、Magic Ponyを買収した。AppleはTuriとTuplejumpを獲得。SalesforceはMetaMindとPrediction I/Oを獲得し、IntelはNervanaを獲得…。

2012年のGoogleの「猫」研究、Facebookの自動顔タグ付けなどディープラーニングがビジネスに多大な影響を及ぼす破壊的な技術だと知られて以降、M&Aが増加。特にアルファ碁や自動走行車などを通じて、一般にも周知される段階を迎えた近年はM&Aが拡大している。

高給取りを集め、継続的な費用の捻出が必要となるAI開発はジャイアント特有のものになっている。アリババが10月に発表した、150億ドルに及ぶAI分野を含む「ムーンショット」プロジェクトもそのひとつ。

しかし、1万人のパイは枯渇しようとしているかもしれません。前述のGoogleの猫プロジェクトで大規模のコンピューティングパワーを利用したニューラルネットの学習に成功したアンドリュー・ウン氏(元スタンフォード大学人工知能研究所所長)は、元バイドゥチーフサイエンティストを辞して以降の目標として、「deeplearning.ai」を開始し人工知能 / 機械学習人材の教育に取り組み始めた。

ウン氏はこのプロジェクトの一環としてオンライン学習「Cousera」でAI関連の講義を作り、同分野の教育機会を広げようとしている。

NVIDIAは人工知能を適用するのに必要な重要なスキルを持つ数万人の学生、開発者、データ科学者を訓練するディープラーニング研究所(DLI)の拡大を発表した。

同研究所はdeeplearning.aiとのコラボレーションを発表した。DLIと協力するAmazon Web Services, Coursera, Facebook, Hewlett Packard, IBM, Microsoft,Udacityの企業は、Courseraのディープ・ラーニング・スペシャライゼーション(Deep Learning Specialization)の一環として、今月下旬に利用可能になる新しい機械翻訳トレーニング・マテリアルに取り組んでいる。

ウン氏はステートメントで「AIは新しい電力であり、私たちがやるすべてのものごとを変えるだろう。DLIと提携して、シーケンスモデルに関するコースの教材を開発することで、誰でも簡単に学習できる最新の進歩を作り出すことができる」と語った。ウン氏はNVIDIAの運営する「The Ai Podcast」でもAIの民主化について熱く語っている。