サトシコンセンサスの次、Algorandの挑戦

本記事は吉田拓史が2018年2月に執筆しました。Algorandについてはアップデート情報があります。近々アップデート記事を書こうと思います。


チューリング賞受賞の暗号学者で、MITコンピュータサイエンス教授のSilvio Micaliが、”サトシコンセンサス”に変わる次世代コンセンサスアルゴリズムを開発をする「Algorand」を創業し400万ドルをPillarやUnion Square Venturesから調達しました(2018年2月時点)。興味深いのはMicariは昨年10月のBitcoinMagazineのインタビューで、PoW(プルーフ・オブ・ワーク)を脆弱かつ”浪費”と切り捨ててPoS(プルーフ・オブ・ステーク)を”民主的”と評価しつつものその課題を指摘していたことです。今回はそのインタビューの抄訳を追っていきましょう。

PoSは”民主的”

Micariはビットコインで頻発する一時的なチェーン分岐時の脆弱性を指摘し、PoSの可能性が大きいと指摘しています。Micariは民主主義的だと評価します。「システムの完全性を維持するあなたの影響力は、システムに実際にどれだけ投資したかに基づいています」。しかし、MicaliはPoSアルゴリズムを作成するのは難しいと指摘しています。いくつかのプロジェクトが安全なプロトコルを保持していると主張しているが、Micaliはそれらの主張が疑わしいと考えています。

PoSの最大の課題の1つは「Nothing at stake problem」です。チェーンがフォークする場合、コインホルダーの最適な戦略は、追加のブロック報酬を得るため両方のチェーンを拡張することです。これは、すべてのブロックチェーンの中心的な設計上の目標である、”ユーザーを単一のチェーンに集約させること”に完全に反してしまいます。

このため、いくつかのプロジェクトでは、コインホルダーにルールを遵守させるためのインセンティブや罰則を追加することで、PoSプロトコルを堅牢にする方法を検討しています。その一環として、ステーク・フォー・ステーク・システムでは、ユーザーが一種のデポジットを用意する必要があります。Micaliは余分な措置を講ずることなく、うまく設計されたPoSが成立する必要があると考えています。彼はデポジットが悪意のプレイヤーに扉を開くと分析しているのです。

”悪意”のモノポリー戦略

「可処分所得の何分の一をテーブルに置いて触れることができない状態(つまりデポジット)にしていいか聞いてみましょうか?」と彼は訪ねたそうです。正直な人は(自由に使えるお金に余裕を持たせるため)小さい量を申告しますが、自由に使えるお金をたくさんもつ悪意のプレイヤーが正直な人を支配することになります。

「危険なのは、悪意をもつ人だけがシステムを操作するために多額の資金をデポジットするということです。そして、彼らが不正行為によってもっと多くのお金を稼ぐと、彼らはテーブルにお金を置くことに満足するようになります」(筆者注、デポジット(ステーク)の総量がコンセンサスに与える影響力を担保するので、悪意のプレイヤーはデポジットを増やして影響力を増すためにさまざま手段を講ずるのです)

彼はまた、罰を使ってユーザーを制御するという考えにも同意しません。「脆弱な国家は脅威と恐怖で支配を行います」。なぜ、ある国では犯罪と戦うために残酷な刑罰を課すことにしているか、というと、犯罪者はめったに捕まえられないからだとMicaliは指摘します。「悪い行為をした人を追放したいと思うはずですが、よく作り込まれたシステムは、人を罰する必要がないシステムです」

サトシコンセンサスの次

MicaliはBitcoinとEthereumの最大の価値は貨幣的価値ではなく、スマートコントラクトを可能にするものであると考えています。「もちろん分散型決済は集中型決済よりも優れていますが、実際に他の形式の通貨と暗号化方式を区別することは、実際にスマートコントラクトをつくることができることです」。彼はBitcoinとEthereumの両方が、利用可能な最良のコンセンサスアルゴリズムを実装することで、ユーザーが利益を得ることを考えているといいます。現在、両方のシステムが制約にぶつかっています。 Bitcoinは1秒あたり7トランザクション、Ethereumは1秒あたり15トランザクションしか処理できない壁にぶつかっています。400万ドル集めたAlgorandがこの課題を解決できるとすればそれは凄い発見だったとなるはずです。

参考